師弟関係

仕事がある程度片付いてきたから、これで落ち着いて今月の大イベントに取り掛かれる。

今回はどこかに出かけるわけじゃないけど、来訪者をお出迎えするのが俺の最重要な仕事。

数年ぶりに競輪の師匠から里帰りすると連絡が来たのは３週間ほど前。全力で丁重に出迎えなきゃならない。なにしろ俺が17歳の丁稚時代からありとあらゆる面倒を見てもらった尊敬する大先輩。40年経っても会話は身が引き締まる。

当時雲の上の人だったトッププロから「最初の弟子になれ」と言われて断れるはずもなく、今の俺なら怒鳴り飛ばすほど気が利かなかったバカな俺を何故か育ててくれた恩は、一生かけても返すことはできない。

今でも、と言うより今だから尚更、もし師匠が黒いものを「白」と言うなら「それは白です」と答える。妄信ではなく、それには意味があると思っているし、その意味を教えてくれる人だと信じているから。

師匠が弟子に注いだエネルギーを思うと、自分に同じ事は到底無理だと分かっていたので、選手時代に弟子を取ることは無かった。引退後にやっと真似事ができたくらい。

師弟関係なんて今では限られた世界での話かもしれないが、それこそ最も人を成長させる関係じゃなかろうか。ほとんど褒められることも無いほど出来が悪く、多分最初に褒められたのは引退する頃だったが。

一人ではできない貴重な体験を沢山させてもらい、何年掛けても気づく事ができない話を聞かせてもらう。弟の様だと親身に厳しく温かく育てて頂いた気持ちにはひたすら感謝。　そういう繋がりを持てる先輩と出会えた縁は一生の宝だ。

文字通り血と汗と涙を流して戦ってきた仲間の中で、最も信頼できる師匠は人生の手本であり目標。再会を心より楽しみにしている。