Odds 完結
2024年2月04日 日曜日
2006年以来長期に渡り描かれてきた競輪漫画「オッズ」がこの1月に完結を迎えた。
漫画の構想段階に作者の石渡治先生に紹介され、競輪の内部事情や自転車機材、トレーニング、選手心理など知ってることをお伝えしてきた。 高名な先生の名前は当然知っていたので全面協力。
当時俺が理事長をやっていた自転車競技普及のためのNPO法人も漫画に登場させてくれた(主人公が乗ったピストは劇中で俺が組んだ自転車)義理堅い方だ。 石渡先生からはリアリティ追及のためピストレーサー組み上げの依頼も受けてお届けし、活動の協力もしてもらった。
そんな縁もあり全巻サイン入りで送ってくださったコミックとプレゼントしていただいた先生直筆のキャラクターは、今も店頭と店内にアルカンシェルのシンボルとして輝いている。
微力ながらも長い間関わり選手引退後も競輪の雰囲気を思い出させてくれた漫画が終わるのはとても寂しい。競輪漫画としては最もよく描かれていて感情移入しやすい作品だと思っている。
後にスピンオフも出るそうなので、自転車競技に身を置く者に限らず是非全巻読んで欲しい。
2月5日(月)13時より営業再開します。
営業再開のお知らせ
2024年2月01日 木曜日
2月5日(月)より営業を再開いたします。
3週間に渡り休養させていただき、AECのお客様方には大変ご迷惑をおかけしました。足の完全復調にはもうしばらく時間が必要ですが、着実に良い方向には進んでいるようです。
今後も変わらずアルカンシェルをよろしくお願いいたします。
入院日記10
2024年1月30日 火曜日
手術は膝の上下の骨を削り金属のインプラントを叩き込む。これの咬み合わせ精度と骨の強度と使用環境によってその後の寿命が決まるようです。
俺が選んだ病院は、最新の手術支援ロボットを使って骨と金属を正確に取り付けることができる数少ない施設。調査の結果これしかないと思って決めた。
その後もレントゲンや骨密度検査等の定期ケアもずっとやってくれるというし、自転車で定期メンテナンスの大事さを知ってるから安心感もある。もし不具合が発生したら大事になる前に手を打ってくれるから負担も少ない。
術後は予想外にリハビリは厳しく有り難かった。この愛の鞭がなければ関節は固まり、その後の制限に大きく影響したはず。休む暇なくPTの方達が働いてくれたおかげで将来に希望が持てた。病院によって手間のかけ方がずいぶん違うらしいから感謝だ。痛かったけど。
パーツの寿命に関わる自分のマテリアルとしては丈夫な靱帯が残っていた事と骨の強さに恵まれたようだ。骨密度検査の結果「若者比124%」。骨が弱くなるとインプラントのガタつきが出ることもあるらしいからこれからも牛筋と魚たくさん食べよう。
3番目の寿命を決める要素は使用環境と頻度。これは高額な決戦ホイールのようなもので、使えば壊すかもしれないが使わないのはもっと勿体ないというやつだ。 膝に危険な動きは避ける習慣が身についているので、自分を信じて徒歩と自転車に絞って消費していこうと思う。
ついに今週の釈放許可が下りたので、営業再開に向けて調整していきます。
つづく
入院日記9
2024年1月29日 月曜日
1日2回の屋外歩行訓練。そういえばデイケア周辺で介護士に連れられて歩く老人をよく見るが、傍から見たら杖ついてよぼよぼ歩く姿は俺も同じ。せめて胸を張って偉そうに歩けばステッキに見えるかも(ダジャレじゃなくて)。
以前車いすに乗った方から歩道の傾斜がとても辛いという話を聞いていたけど、確かに摺り足ヨボヨボだと路面の細かい凹凸も傾斜も敏感になる。危険はそこかしこに潜んでいる。
車で走ってると気にもしない路面が、自転車だととても荒れていて走り難いとか勾配があって重いのと同じようなもの。 平坦地でこれだから年取って斜面地に住むのはかなり大変だろう。
ずいぶん長い間徒歩で移動する機会が減っていたので、散歩してると新たな気づきがあるものです。何人もの杖をついた老人を見かけ、健康そうな人とすれ違うので、歩きながらいろいろ想像してしまう。
今、心無い無責任な奴に突き飛ばされたら俺はどうなる?悪意がなくてもアクシデントはあるかもしれない。 昔大腿骨を折って復帰直後に後輩が4の字固めを仕掛けてきた。「ノーノ―折れてる折れてる!」知らなかったとはいえ恐ろしい奴だ。そんな男が現在某県の代表監督をやっているけどいいのか?
そういう奴がいないとも限らないから今後しばらくは慎重な行動に努める。皆さんはAECで会っても、決してプロレス技は仕掛けてこないでくださいね。
くれぐれも労わって下さいますよう宜しくお願い致します。
つづく
入院日記8
2024年1月28日 日曜日
いよいよ退院目標に設定した週が明日から始まる。様々な都合もあるが、今後どれだけリハビリの成果が出るかによって決まるだろう。知人からは「リハビらざる者食うべからず」と有り難い言葉をもらった。
今ではリカンベントを先に乗り出したじいさん達がおしゃべりしてる間に追越し、逃げ切り体勢に入った。俺は黙々と自分で決めたメニューをこなしている。
初めて固定バイクに乗るおばあちゃんは「自転車に乗ったことがない」という。PTの実習生も「僕も長崎育ちなので自転車乗れません」「自転車乗れますか?」と聞くので「昔乗ったことはあります」と答えておいた。
仮出所が認められ屋外歩行訓練へ。久しぶりの娑婆の空気は冷たいと聞くが確かに。でもうまい。 路面は平坦に見えても思いの他うねっていて歩き難い。普段なら気付かない僅かな下り傾斜が歩幅を縮める。 普通に歩くのって難しいな。
杖を持っていると割と車は道を譲ってくれるが、横断歩道に立っていても無視して突っ込んでくるご老人もいる。油断はできないぞ。そうだこんな時は印籠をもらいに行こう。年寄りは印籠に弱いはずだ。
散歩がてら保健所に行き例の「ヘルプマーク」を申請。ちょうど一年前に書いたあれだ。佐世保じゃ必要ないかもしれないけど、全国各地で助けてくれるかもしれない。すぐくれた。
休憩中、真っ直ぐに立つとこれまでとは全く違う感覚。そう、当たり前に両足が伸び切っているからすごく楽。従来の片足立ちとは違うから疲れる感じがない。おいおい、みんなこんなに楽してたの?
そしてちょっと歩いただけでバチバチの筋肉痛。夜はこっちが痛くて眠れなくなった。だって何年も使ってなかった部分をこれから使っていくんだから赤ちゃんみたいなもんだ。
チンバでビッコでガンニャの俺は卒業する。やりたい事をもっとやれるように、行きたい所にもっと行けるように、サイボーグとして生まれ変わる。
つづく
入院日記7
2024年1月27日 土曜日
新たなステージ二つ目は仕事。一応社会人なので忘れてしまったわけじゃない。
体の痛みや疼きでそれどころではなく、ミスを避けるためにも我慢していた。が、そろそろ溜まる一方の事務処理を進めておかないと来月まずいことになりそう。
現場作業はともかく、今はPCがあれば結構な仕事がこなせる。むしろ自転車屋もPCがなければ全く仕事にならないくらいなので、病室で事務処理ができて本当に良かった。
いつも後回しになるブログだって毎日のように更新できるし、電動ベッドに寝っ転がったまま仕事できる。更に言えば一日3食ルームサービスが運ばれる。日頃10年に一度も計らない体温だって血圧だって日に何度も調べに来てくれるし、トイレも風呂も数歩で使えるこの環境。もしかして老人ホームに入っても十分仕事できるんじゃないか?
安静にしている時間が短くなると同時にやることが増えてきた。もうちょっと暇だと思っていたんだけど・・・ 新たなことを始めるには時間圧縮で合間時間を増やすか、従来の無駄な時間の浪費をやめるしかない。それができなければ昨日と同じ明日だ。
入院中は時間の使い方も大事な復帰プラン。生活習慣の見直しにも丁度良かですね。
つづく
入院日記6
2024年1月26日 金曜日
入院中は暇と思われがちだが、リハビリもアイシングも沢山あるし、検温、回診、食事、検査、風呂など定例義務は意外と多く、自身の動きもノロいので何かをやるにはこの合間の時間をつなぎ合わせるしかない。自主練も増やしたから昼寝もできない程忙しくなってきた。
病院での生活リズムにもだいぶ慣れたし、力の入れ処と抜き処も読めてきた。リハビリも無暗矢鱈に頑張っても無駄で、体の声を聞きタイミングが来た時にしっかりやると効果が上がる事を知っている。(なにしろ復帰のプロだから)
という訳で、身体も少し動けるようになってきた今、二つの新たなステージに入った。一つ目のリハビリではあの拷問マシーンを卒業し、リカンベントでペダリング。
最終的に拷問マシーンの限度角一杯も難なくこなせる様になり、所詮口ほどでもない機械だったと判明。まだ人間がロボットに負けるわけにはいかん。
リカンベントは空気抵抗が少なく、前傾を保てない一般人でも結構な高速で走ることができる仰向けで走る自転車。バンクで走った時はレース用バイクでないにも関わらずいいスピードが出て驚いた。あれ楽しいからいつか手に入れようかな?
これのリハビリ用固定バイクからスタート。ようやく自転車らしいものに跨がれる日が来た。
細かいことを書き出したら切りがないけど自分の自転車選手としての感覚がまだ残っていることにも気づかされた。きたぞー細胞が活性化する感覚、これからが本当の復帰(どこに?)だ。
ペダル上の足裏の感覚、クランクの長さやシートの角度、足首膝股関節の軌跡、インナーマッスルの動き・・・あらゆる部分と全体の連動に神経が巡りだす。40年以上折れ曲がっていた膝が真直ぐになった動きに感動すらあった。
今思うとこんなにバランス崩れたままで、かなりハンディ背負って走ってたな。俺って偉いわ(一応自分で褒めとく)おっさんなのに身長が2センチも伸びて別人になったぞ。
つづく
入院日記5
2024年1月25日 木曜日
TVは時間の無駄だから入院中はPCと読書に勤しむ。病棟にも書棚があり 「ゴルゴ13」を発見。最近書いてなかったが俺は大ファン。何度本気で仕事を依頼したいと思ったことか。
彼のように超一流クラスになると簡単に会える機会はないが、なんと以前佐世保に来ていたことが判明!そうかあの時か! デュークに会える千載一遇のチャンスだったのに騒動に気を取られて気づかなかった。大失態。
1991年6月普賢岳の大火砕流の日、Gは任務を遂行していた。万が一どこかですれ違っていたら俺はすぐ気付くから、尾行して殺されていた可能性もある。会わずに命拾いしたのかも・・・・
助かった命で他の書籍も読んでいる。昔は入院中に100冊以上読んだこともあるのに、ノートPCと老眼を手に入れてから読書量が極端に減ってしまった。今回も持ち込んだのは6冊だけ。ネット以上に読書が大事と思っているのだが・・・
以前クラブのメンバーだった大学生に「趣味は読書」と答えると「えー?またまたー。本読むようには全く見えません」と言われた。完全にナメられている。一体どう見えてたんだろうか?
ま、そう見えない方が面白いと思っているので笑ってごまかしたが、その辺の大学生よりは余っ程読んでいるかもしれないぞ。
親の庇護のもとぬくぬくと暮らしている学生には想像できないだろうが、「敷居を跨げば7人の敵がいる」といわれている。競輪選手にでもなってしまったら8人だ。そんな社会の荒波で戦うのに最もお勧めできる実用書が「ゴルゴ13」だ。
就活に有利になることしか考えてない学生は、今すぐに読んでおいた方が良い。人事担当者に「G」の名前を匂わせれば別室で特別面接してくれるはずだ。
そうならなかった時は会社が悪いので諦めてくれ。
つづく
入院日記4
2024年1月24日 水曜日
歩行器で動けるようになり、杖でよぼよぼ歩けるようになり、シャワーも一人で浴びれるようになった。可動域も行動範囲も日毎に広がっていく。
毎日着実に進歩している実感がある。人体の復活力はすごい。かつて大怪我から復帰した時、競輪関係誌に「不死鳥のごとく蘇った」と書かれたが、先輩からは「トカゲのように再生した」と言われた。フェニックスの方がカッコはいいが実際は地を這うトカゲの方が言い得ていた。
そんなトカゲでも身体は治ると強く思えば早く治るし、できると信じ込めば大抵のことはできる。今自分ができていないことは信じきれなかった領域だと思っている。
と恰好つけても、計測した杖歩行の速度は分速20mとトカゲより遥かに遅い。時速だと1.2km/hだが1kmどころか10分かけて廊下往復するのが精一杯。時がゆっくりと流れています。
俺は一人が好きなので個室に入っているが、廊下やリハ室で同じ病棟の老人達(しか見ない)の会話を聞いていると俺より早く次のプログラムに進んでる人たちばかり。専らの話題は今日の関節可動角度だ。
俺の次の日オペしたじいさんが固定バイクに乗り出した。俺もこっそり試したが膝が曲がらず全く乗れたもんじゃない。「あんたいい脚してるな。サッカーか体育教師でもやってるのか?」「いいえ腫れ上がってるだけです」「自転車はまだか?ペダルを回すにはサドルの高さをだな・・・」とか親切にアドバイスもしてくれる。 自転車に乗るためのオペだったのにこれはやばい?元選手だとは口が裂けても言えない。
遅れてる・・・俺の方が遅いじゃないか。みんな俺より我慢強いのか?と凹みかけていたところ、看護師が「違う手術なんです。あなたはもう少しかかります」との事。
だろーね。みんな傷口開けて乗ってるかと思ってたぜ。
つづく
入院日記3
2024年1月23日 火曜日
あと一歩で信頼関係が崩壊しそうなリハビリではあったが、昨日は俺の2倍に腫れ上がった足を若くて奇麗なPTが優しくマッサージしてくれた。信頼関係復活。
そもそも俺はこの程度の痛みででグダグダ言うような男ではない(ほんとか?)。被災地では2週間以上風呂に入れない。まともな寝床もない。水も食料もトイレも足りない。もちろん雪の日だってエアコンなんて効かない。そんな方々に対して失礼。
一時期歩けなかろうが、仕事ができなかろうが、多少痛かろうが、ここは別格の待遇だと感謝しなければ。普通の生活は本当は特別な日々なんだ。
もし今ここで地震や火事が起きたら?何もできない俺一人では逃げ遅れて死ぬかもしれない。そういう人達が日本中にたくさんいるはずだから、自分が困った時を想像して、備えと互助の精神は大切にしとかないとね。周囲の人には優しくしましょう。
いつもと違う生活をすることで、日頃を見直すこともできる。痛い目にあっても美女に優しく揉んでもらえるし、不自由からは自由と有難みを知ることができる。
人生万事塞翁が馬。苦がなけりゃ楽だと判らないんだから痛みに耐えてリハビリ頑張っとこう。
つづく